社内DXとは? 実現のためのポイントや実例を解説
デジタル技術は日々進歩しています。
ビジネスにおいて企業内でデジタル技術を活用すれば、従来よりも作業効率や生産性を高められるようになるでしょう。
本記事では社内DXの概要や社内DXが求められる理由、実現するためのポイント、効果的なツール・システムなどについて解説します。
社内DXとは?
社内DX(社内デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して社内の体制や働き方を変革する取り組みのことを指します。
具体的には、契約手続きの必要な印鑑を電子印にする、稟議書を電子化する、顧客情報を電子データとして管理するなどが社内DXとしての一例です。
なお、社内DXはただデジタル技術を導入すればよいというわけではありません。
デジタル技術を用いてバックオフィスの業務効率や生産性を高めることが目的です。
社内DXが求められる4つの理由
社内DXが求められる理由には、主に以下に挙げる4つが挙げられます。
- 全社的なDXの足がかりになるため
- BCP対策になるため
- 限られた人材で業務を遂行できるようにするため
- 2025年の崖に対応するため
1. 全社的なDXの足がかりになるため
社内DXは全社的なDXの足がかりになります。
企業がDXを推進することは新規ビジネスの開発につながりますが、企業全体のDXとなると範囲が広いため具体的にどのような施策を講じればよいのかイメージしにくいケースが多いでしょう。
社内DXはツールの導入やアナログ技術のデジタル化など社内業務に関する改善になるので、手段や方法がイメージしやすい傾向にあります。
そのためまずは社内DXからスタートさせることで、取引先なども巻き込んだ全社的なDXに取りかかりやすくなるでしょう。
2. BCP対策になるため
社内DXの一環として、オンライン会議システムやチャットツール、クラウドサーバーなどの導入が挙げられます。
オンライン会議システムやチャットツールの導入は業務の効率化、生産性の向上だけでなく、BCP(事業継続計画)対策としても効果的です。
BCPとは緊急事態に巻き込まれても、企業が被害を最小限に抑えて業務を継続するための取り組みのことです。
例えば自然災害によってオフィスが被害を受けたとしても、オンライン会議システムやクラウドサーバーなどを活用してテレワークを導入できていれば、遠隔地からでも事業を継続できる可能性が高まります。
政府の地震調査委員会の発表(2022年1月1日時点)によれば、40年以内にマグニチュード8~9クラスの南海トラフ地震が発生する確率は90%程度とされています(※)。
このような自然災害のリスクに対応するためにも、社内DXは効果的です。
※参考:地震調査研究推進本部地震調査委員会. 「長期評価による地震発生確率値の更新について」P3.
https://www.static.jishin.go.jp/resource/evaluation/long_term_evaluation/updates/prob2023.pdf, (2023-11-25).
3. 限られた人材で業務を遂行できるようにするため
社内DXを推進することで、限られた人材でも効率的に業務を進めることが可能です。
日本は今後、人手不足の深刻化が予想されています。
内閣府の発表によれば、2065年には社会を支える生産年齢人口(15~64歳)は4,529万人と、2020年の7,509万人を約3,000万人も下回ってしまいます(※)。
社内DXに取り組み業務を効率化することで深刻化する人手不足にも対応可能です。
※参考:内閣府. 「令和4年版高齢社会白書」. https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2022/gaiyou/pdf/1s1s.pdf, (2023-11-25).
4. 2025年の崖に対応するため
2025年の崖とは、経済産業省が発表した『DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~』で用いられている言葉です(※)。
2025年頃には、多くの企業で用いられている基幹システムのサポートが終了する上に、運用を担っていた人材が定年退職することが予想されています。
古いシステムをそのままにしていると、維持費がかかるだけでなく、新たな技術に対応できず競合との差が拡大する恐れがあります。
また古いシステムに関するノウハウや知識を把握している人材が退職してしまうことで、何らかのトラブルが起きた際に迅速な対応ができなくなってしまうかもしれません。
社内DXを行っていれば、こういった問題を回避できるでしょう。
※参考:経済産業省. 「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」. “DXレポート~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~”. https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/digital_transformation/20180907_report.html, (2023-11-01).
社内DXを推進する際に解消すべき3つの課題
社内DXを推進する上では、以下に挙げるような課題を解消する必要があります。
- DXについての理解が足りない
- 適切な人材を確保できない
- 部署間での連携が取れない
1. DXについての理解が足りない
社内DXを推進するためには現場の従業員はもちろんのこと、経営層や管理者までもが社内DXの目的や得られる効果について理解しておくことが大切です。
特に決定権を持つ経営層が社内DXについて理解が足りないと、必要性がないと判断され必要な投資が行われず取り組みが進められなくなってしまいます。
2. 適切な人材を確保できない
社内DXを推進する上では、適切な判断が下せるIT人材が求められます。
しかし、IT人材は確保しにくい状況です。
IT人材の需要は高まるため、2030年には最大で約79万人のIT人材が不足する恐れがあるとされています(※)。
企業にIT人材が不足している場合、外部にアウトソーシングするケースも考えられます。
しかし社内DXを推進する上では、ITについての知識やスキルだけでなく、自社の課題を分析し解決する能力も必要です。
外部にアウトソーシングするだけでは、社内の課題を解決するための効果的な社内DXを推進できないでしょう。
※出典:経済産業省. 「平成 30 年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(IT 人材等育成支援のための調査分析事業)」P1. https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf, (2023-11-25).
3. 部署間での連携が取れない
社内DXは、部署間での連携が重要です。
社内DXでどのようなメリットを享受したいかは、部署によって異なります。
また従来の仕事の進め方にこだわり、社内DX推進に非協力的な従業員や部署もあるかもしれません。
このような部署間での連携に時間を割かれてしまうと、社内DXの導入が進まなくなってしまいます。
部署間での調整に時間を割かないためには、社内DXの目的や優先事項を明確にしておく必要があります。
非協力的な従業員の理解を得るためには、経営層や管理者が社内DXについてのメリットを把握して周知することが大切です。
社内DXを実現するための5つのポイント
社内DXを進めるためには、以下に挙げるポイントを押さえておきましょう。
- 計画を策定する
- システムやサービス、ツールを導入する
- 社を挙げて取り組む
- 最小単位からスタートさせる
- DX人材を確保する
1. 計画を策定する
社内DXを推進する前に計画を策定します。具体的には次のような計画を策定しましょう。
- 1. 社内DXを推進する目的を明確にする
- 2. 社内DXの対象となる範囲を決める
- 3. 従業員にヒアリングして業務の要求を一覧化する
- 4. 現状とあるべき姿を洗い出して社内DXでどのように変わるかを明確にする
- 5. 目的達成に必要なシステムやサービス、ツールを検討する
- 6. システム・サービス・ツール導入のスケジュールや作業工程を決定する
- 計画を策定しておくことで、スムーズに社内DXの推進につなげられます。
2. システムやサービス、ツールを導入する
計画策定にあるように、社内DXを実現するためには課題を解決するためのシステムやサービス、ツールの導入が欠かせません。
例えば営業の効率化が目標であれば、オンライン会議システムの導入が適しているでしょう。
システムやサービスなどを導入する際は、事前に従業員に使用してもらうのがおすすめです。
システムやサービスのトライアル期間を挟むことで、デジタル化で得られるメリットなどを従業員に把握してもらいやすく社内DXに対しての意識を変えられます。
また社内DXのためにシステムやサービスを導入する際は、導入を目的に使用しないことが大切です。
システムやサービスの導入はあくまで社内DX実現のための過程にすぎません。
システムやサービス導入によって、実際に業務の効率化や生産性の向上が図られているかをチェックして、必要に応じて施策を講じるようにしましょう。
3. 社を挙げて取り組む
社内DXは現場だけもしくは経営層だけが乗り気では実現しません。
現場の従業員は社内DXで得られるメリットについて把握して、経営層はメリットの他にも体制の刷新や社内DX実現のために必要な投資について把握する必要があります。
経営層は社内DXの重要性を積極的に発信して、全社で社内DXについての認識を統一させる役割も担っています。
また管理者にあたるマネジメント層は現場と経営層をつなぐ役割として、業務に支障がないかを確認・すり合わせを行いながら社内DXを推進させていきましょう。
4. 最小単位からスタートさせる
社内DXで解決すべき課題はいくつも存在します。
しかし最初から全ての課題を解決しようとすると、規模が大きすぎて失敗してしまうかもしれません。
社内DXに取り組む際は最小単位からスタートさせるのがポイントです。
例えばペーパーレス化を図る、チャットツールを導入するといった導入ハードルが低い取り組みから始めるのがよいでしょう。
5. DX人材を確保する
社内DXを推進するためには、DX人材の確保が必要です。
経済産業省ではDX人材を次のように規定しています。
自社のビジネスを深く理解した上で、データとデジタル技術を活用してそれをどう改革していくかについての構想力を持ち、実現に向けた明確なビジョンを描くことができる人材(※)
つまりDX人材となり得る従業員は、IT知識だけでなく社内のさまざまな課題を把握し、それに対して改善策を考える必要があります。
従業員をDX人材として育成すれば、自社の抱える課題に合ったDX化を進められるでしょう。
※出典:経済産業省. 「DXレポート2 中間取りまとめ(概要)」P30. “4.6 DX人材の確保”. https://www.meti.go.jp/press/2020/12/20201228004/20201228004-3.pdf, (2023-11-30).
社内DXに効果的なシステムやツール7選
社内DXを実現するためにはシステムやツールの導入が欠かせません。
社内DXの実現に効果的なシステムやツールの代表例は、以下の通りです。
- オンライン会議システム
- チャットツール
- RPAツール
- BIツール
- 人事管理システム
- 経費精算システム
- チャットボット
1. オンライン会議システム
オンライン会議システムを導入することで、従業員は外出せずに打ち合わせできるようになります。
出社や取引先などに向かう移動時間を削減できるため、効率的に業務が進められるでしょう。
またオンライン会議システムの導入は、テレワークを実施する上でも欠かせません。
オンライン会議システムでテレワークが実現すれば、遠方にいる従業員も採用できるようになります。
その結果、多様な人材を確保できるようになり、人手不足の解消も期待できます。
2. チャットツール
チャットツールは、オンライン上で従業員間のコミュニケーションを円滑にするツールです。
従来は従業員間のコミュニケーションを図るツールとして、メールを用いるのが一般的でした。
チャットツールはメールとは異なり件名や挨拶文、署名が不要なため、従業員同士で気軽にやり取りが可能です。
チャットツールの中には、相手がメッセージを読んだかどうかが分かる既読機能が備わっているものもあれば、相手が作業中か離席中かどうかが分かる機能が備わったものもあります。
これらの機能が備わったチャットツールであれば、メールとは異なり相手がどのような状況なのかを判断可能です。
3. RPAツール
RPA(Robotic Process Automation)ツールは、ソフトウェア上のロボットによって業務を自動化するツールのことを指します。
RPAツールで自動化できるのはデータの入力やコピー&ペーストといった単純作業です。
例えばシフト作成や給与計算といった作業であれば、RPAツールで自動化できるでしょう。
RPAツールで一部の業務を自動化すれば担当者の負担を軽減できるだけでなく、手作業によるミスの発生も防げます。
4. BIツール
BI(Business Intelligence)ツールは、ビジネスの意思決定に関わる膨大な情報を分析して、経営に活用するためのツールです。
データをBIツールに読み込ませれば資料を自動で作成するため、従来のようにMicrosoft Excelなどに入力して計算などを行う手間を省けます。
分析結果もスピーディに表示されるため、効率的に業務が進むでしょう。
5. 人事管理システム
労務管理や評価管理など、人事についての業務を効率化するためのシステムが人事管理システムです。
従来の人事管理はExcelデータや紙の書類でやり取りするケースが多くあり、書類の配布や回収、確認などで工数がかさんでしまう傾向にありました。
人事管理システムを導入すればデジタル化されるため、人事担当者の業務負担を軽減可能です。
また人事管理システムには従業員の評価やスキルなどを蓄積できるため、組織のマネジメントなどにもデータを活用できるでしょう。
6. 経費精算システム
人事関連の負担を軽減するシステムとして人事管理システムが挙げられるように、経理関連の負担を軽減するシステムとして挙げられるのが経費精算システムです。
経費精算システムによっては、領収書をOCR(光学文字認識)で読み取る機能や交通系ICカードをかざすだけで交通費を申請できる機能などが備わっています。
このような経費精算システムであれば従来のように申請金額を入力する必要はありません。
ミスの発生も軽減できるため、確認、承認の作業も効率化できます。
7. チャットボット
RPAのように業務を自動化する技術は、社内DX推進に適した技術です。
社内DX推進に適した自動化技術としては、チャットボットも挙げられます。
チャットボットはユーザーがテキストを入力すると自動で返答する仕組みです。
チャットボットは主に次のように活用できます。
- 従業員からくる問い合わせや質問に対する自動返信業務のサポート
- 顧客やユーザーからの質問に自動返信
- 顧客やユーザーとのコミュニケーション強化
例えばチャットボットを導入することで、従業員や顧客からの質問に対して、手間をかけずにいつでも返答できるようになります。
中には多言語に対応しているチャットボットもあります。
多言語に対応しているチャットボットの場合、日本だけでなく世界にオフィスがある企業でも導入しやすいでしょう。
また自社に勤務する外国人の従業員への対応にも活用できます。
社内DX事例3選
ここからは、オンライン会議システムやチャットボットなどを活用して社内DXを推進した事例をご紹介します。
いずれのケースもツールやシステムを導入することで、業務の効率化が図れているので参考にしてみてください。
RPAツールで年間159時間の業務時間削減
石川県加賀市市役所では、職員が住民異動による保険資格の付与や保険料算定を手作業で行っていました。
手作業による業務負担を軽減するためにRPAツールを導入した結果、年間159時間もの業務時間の削減に成功しています。
RPAツール導入前は年間195時間もの業務時間がかかっていましたが、導入によって81.5%も削減できています(※)。
RPAツールは加賀市に限らず多くの自治体で導入されています。
総務省の発表(2018年1月1日時点)によれば都道府県は29.8%、指定都市は40.0%の導入率です(※)。
加賀市のように単純作業を自動化するのであればRPAツールの導入を検討してみましょう。
※参考:総務省. 「自治体におけるRPA導入ガイドブック」P80. https://www.soumu.go.jp/main_content/000890388.pdf, (2023-11-25).
※参考:総務省. 「地方自治体におけるAI・RPAの実証実験・導入状況等調査」P2. https://www.soumu.go.jp/main_content/000624150.pdf, (2023-11-25).
オンライン会議システムによって移動時間を有効活用
オンライン会議システムを導入して移動時間を削減できたケースもあります。
栃木県宇都宮市市役所では総合行政ネットワーク(LGWAN)に対応したオンライン会議システムを構築しました。
オンライン会議システムを構築したことで、在宅勤務の実現につながっています。
また移動に1時間以上かかる出先機関への出張も、オンライン会議システムで対応したことで、移動時間を有効活用できています(※)。
※参考:総務省. 「⾃治体DX推進参考事例集【3.内部DX】」P88. https://www.soumu.go.jp/main_content/000879052.pdf, (2023-11-25).
チャットボットを導入して問い合わせ対応時間を削減
福岡県北九州市市役所と山口県下関市市役所ではチャットボットを導入して、庁内用のFAQシステムを構築しました。
庁内FAQシステムは職員から寄せられた質問をAIが理解して、データに基づき自動で回答するという仕組みです。
庁内FAQシステムが導入されたことで、それまで問い合わせ対応に平均5分かかっていたところ、平均2分にまで短縮できています(※)。
問い合わせ対応の時間が短縮できたことで、職員は他の業務に集中できるようになったということです。
※参考:総務省. 「自治体におけるAI活用・導入ガイドブック<導入手順編>」P12. https://www.soumu.go.jp/main_content/000820109.pdf, (2023.11.25).
社内DXで業務の効率化を実現させよう
社内DXに取り組むことで、業務の効率化や生産性向上が実現可能です。
社内DXは全社的なDXに取り組むきっかけになる、BCP対策になる、2025年の崖に対応するといった点でも推進する必要があるでしょう。
社内DXを実現するためには、自社の課題や目標に適したシステムやサービスを導入する、最小単位からスタートさせるなどのポイントを押さえておくことが大切です。
社内DXに効果的なシステムやツールにはオンライン会議システム、チャットツール、RPAツールなどがあります。
例えばチャットボットであれば社内向けの業務サポート、顧客からの質問に自動で回答が可能です。
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