FAQチャットボットとは?活用場面や導入方法を解説
従来のFAQシステムに代わるものとして、FAQチャットボットが注目されるようになっています。業務効率化やユーザーの利便性・満足度の向上など、さまざまな課題解決のために、FAQチャットボットの導入を考えている企業も多いのではないでしょうか。
本記事では、FAQチャットボットの概要や従来のFAQシステムとの違い、導入のメリットなどの基礎知識を解説します。導入の注意点や活用場面、選び方なども紹介しますので、ぜひ企業の課題解決にお役立てください。
FAQチャットボットとは
FAQチャットボットとは、FAQシステムとチャットボットの機能を組み合わせたツールです。事前に登録された質問を参照し、特定のキーワードに合致する回答を表示します。例えば「注文をキャンセルしたいので返金してほしい」といったリクエストがあった場合は、「注文」「キャンセル」「返金」などのキーワードに反応して、回答を作成します。
FAQチャットボットの多くは、種類としては「シナリオ型(ルールベース型)に分類されます。シナリオ型は、その名前の通り、あらかじめ作成したシナリオに沿って自動で回答するチャットボットです。
ただしその構造上、シナリオで設定したキーワードが含まれない場合には、回答を用意できません。複雑なリクエストが来た場合も、シナリオ型では対応できない可能性があります。
FAQチャットボットとFAQシステムの違い
FAQシステムとは、「よくある質問とその回答」にあたるFAQコンテンツの作成を支援するシステムを指します。チャットボットは会話形式でボットが回答するのに対して、FAQシステムはWebサイトや検索エンジンのような形で答えや関連するコンテンツを返すという点が大きな違いです。
さらに詳しいFAQチャットボットとFAQシステムの違いは、以下の4点にまとめられます。
● 問題解決のスピード
● 回答の内容
● ユーザー側の操作性
● 蓄積データの内容
上記4つの違いについて、以下で詳しく解説します。
問題解決のスピード
まずは問題解決のスピードです。
FAQシステム(FAQサイト)は、想定されるユーザーからの質問とその回答を、1つのページもしくは複数のページにまとめたものです。ユーザーの検索能力やページの検索性の高さに依存するため、知りたい内容によっては、問題解決が遅れる場合もあります。
FAQチャットボットは、ユーザーに検索させるのではなく、用意された質問に対して自動で返答するものです。あらかじめ設定したシナリオにマッチする内容であれば、会話を通じてスムーズに問題を解決できます。「目当ての情報がなかなか見つからない」といった、ユーザーのストレスを軽減しやすくなります。
回答の内容
回答の内容についても、FAQチャットボットとFAQシステムで大きな違いがあります。
FAQシステムでは、質問に対する回答として、複数の候補が表示されることが多くあります。例えば洗濯機が故障してしまったとして、「洗濯機 動かない」というキーワードで検索した場合、「故障時マニュアル」のページが有力候補です。
しかしFAQシステムでは、該当するキーワードを含んでいれば、関連度の薄いページでもまとめて表示されることがあります。ユーザーからすれば、それぞれの候補と、検索キーワードとの関連度合いが分かりにくい状態です。
FAQチャットボットであれば、1つの質問に対して、あらかじめ紐づけられた有力な回答候補が返されるため、回答の精度が高くなりやすいとされています。
ユーザー側の操作性
ユーザー側の操作性、つまりユーザーインターフェースの部分でも違いが見られます。
FAQシステムは、ユーザーが自分で操作しながら回答を探さなければなりません。ページの検索性が悪かったり、上手く検索できない場合は、目当ての情報にたどり着けない可能性があります。
FAQチャットボットは、普段から使っているツールに近く、チャットアプリのような感覚で使えます。操作性に優れているだけでなく、「問い合わせをするためのハードル」を下げる効果も期待できるでしょう。
蓄積データの内容
蓄積データの内容も異なります。
FAQシステムの利用状況を調べる場合、「どのページがよく閲覧されているか」「どのキーワードで多く検索されているか」といったアクセス解析の手法を用いるのが一般的です。
FAQチャットボットには、ユーザーとの会話のやり取りが蓄積されていきます。FAQシステムと同じように、サービスの改善に役立てられるのはもちろん、利用率や利用傾向などマーケティングにも活用できるのが大きなメリットです。
FAQチャットボットを導入するメリット
FAQチャットボットを導入するメリットは、以下の4つです。
● 業務効率化を期待できる
● 24時間365日の対応ができる
● ユーザーの利便性・満足度が向上する
● ユーザー情報を分析できる
上記の4つのメリットについて詳しく解説します。
業務効率化を期待できる
FAQチャットボットを導入する重要なメリットとして挙げられるのが、業務効率化を期待できる点です。
例えば、電話やメールでユーザーの問い合わせ対応をする場合、1対1での対応が基本です。1人で同時に2人以上のユーザー対応を行うのは困難なので、どうしても人手が必要になります。問い合わせには、毎日来るような頻度の高いものもあるでしょう。上記のような有人での問い合わせ業務を、チャットボットで自動化することで、担当者の負担を減らせます。
詳しくは後の項目で解説しますが、社内ヘルプデスクの業務も、チャットボットの活用ができます。ユーザー問い合わせのケースと同様、対応をチャットボットで統一すれば、担当者がより重要な業務に集中しやすくなります。
24時間365日の対応ができる
「24時間365日対応できる」のも、FAQチャットボットのメリットです。電話やメールのやり取りは、有人での対応になるため、どうしても処理できない時間が発生します。
特に緊急度の高い質問など、ユーザーによっては「翌日の営業開始まで待てない」というケースもあるでしょう。チャットボットであれば、時間帯に関係なくユーザーの質問に回答できるため、後述の利便性や顧客満足度にもつながります。
ユーザーの利便性・満足度が向上する
ユーザーの利便性・満足度が向上するのも、FAQチャットボット導入のメリットです。チャットボットは、質問に対して即時に回答するため、メールや電話と異なり「待たされる時間」が存在しません。
さらにチャットボットは、慣れ親しんでいるチャットツールと同じように利用できるため、会話形式で気軽に質問ができるという特徴があります。「問い合わせをしたいけど、電話だとちょっとハードルが高い」と悩んでいる人でも、活用しやすいツールです。
「適切なサポートを受けられなかった」と感じると、ユーザーの満足度は低下していきます。しかし上記のように、ユーザーが疑問を感じた際にスムーズに解決できるシステムが整っていれば、ユーザー満足度の向上が期待できます。
ユーザー情報を分析できる
ユーザー情報を分析できるのも、FAQチャットボットのメリットです。チャットボットを導入すれば、会話履歴としてユーザーとのやり取りが蓄積していきます。それを分析すれば、さまざまなことに役立てられます。
例えばカスタマーサポートとしてFAQチャットボットを導入している場合、「合計質問数」「カテゴリ別の内訳」「満足度(アンケートを実施している場合)」などの数値が分かります。回答の精度を改善するだけでなく、声にならないユーザーの不満を可視化するなど、活用方法はさまざまです。
社内ヘルプデスクで使っている場合も、よくある質問や未解決になっている質問の傾向を洗い出し、回答の質をより高めていけます。従業員が自己解決できる環境を整備できれば、業務を円滑に進めていけるようになるでしょう。
FAQチャットボットを導入する際の注意点
FAQチャットボットを導入する際の注意点は、以下の4つです。
● 導入コスト・ランニングコストがかかる
● QAを用意する必要がある
● 継続的なメンテナンスが必要になる
● 複雑な対話は難しい
上記の4つの注意点について詳しく解説します。
導入コスト・ランニングコストがかかる
まずは、導入コスト・ランニングコストがかかる点です。チャットボットを使うためには、専用のサービスを利用することになるため、初期費用・月々の利用料金がかかってきます。
初期費用は、10万円程度が相場です。無料で導入できるチャットボットもあるため、自社の予算計画を参照しつつ、サービスを選ぶ際によく吟味するとよいでしょう。月々の利用料金は、FAQチャットボットであれば、月額数十万円程度が相場になります。
チャットボットを自社で開発する方法もありますが、「どちらにせよコストの発生は避けられない」と考えておいて間違いはないでしょう。
QAを用意する必要がある
FAQチャットボットの場合、事前にQAリストを用意する必要があり、それなりの工数がかかる点にも注意が必要です。リストが充実していなければ、ユーザーの質問に回答できないケースも増え、顧客満足度の低下につながってしまいます。
なお「QAジェネレーター」というツールもあり、ドキュメントや規約をもとに、生成AI(人工知能)にQAリストを自動生成させる方法もあります。チャットボット「Cognigy」との併用もでき、FAQチャットボットの導入・運用に便利です。QAリストの用意に課題を感じている場合は、ぜひこれらのサービスをご検討ください。
※QAジェネレーターの資料ダウンロードはこちら
継続的なメンテナンスが必要になる
FAQチャットボットは、導入してそれで終わりにするのではなく、定期的なメンテナンスが必要です。例えば、導入した後に「解決していない疑問」がユーザーから寄せられた場合、QAリストをより充実させる必要があります。これはカスタマーサポートも、社内ヘルプデスクも同様です。
さらに「既存の回答の内容が不十分」といった声も想定されます。リストに新しく追加するだけでなく、既存の回答内容を充実させるのも大切です。「そもそも回答されるかどうか」「回答の内容が適切であり、充実しているかどうか」は、ユーザーの満足度にも大きく関係します。
複雑な対話は難しい
複雑な対話は難しいという点にも注意が必要です。FAQチャットボットは、あくまでも「1つの質問に対して1つの回答を用意する」ためのツールになります。本記事でも何度か触れているように、こちらで想定していない質問・用意していない質問には、チャットボットの構造上対応できません。
FAQチャットボットは、いわゆる「一問一答形式」ではない質問も、対応が難しいとされています。これらの課題を解決するためには、幅広い質問に答えられるようにシナリオを充実させるか、AIを搭載しているチャットボットを利用する必要があります。
FAQチャットボットの活用場面
FAQチャットボットの活用場面としては、主に「カスタマーサポート」「社内ヘルプデスク」の2つが挙げられます。これまでの内容を総括する形で、FAQチャットボットの活用場面を詳しく解説します。
カスタマーサポート
FAQチャットボットがよく使われているのは、カスタマーサポートの分野です。従来のユーザー対応は、電話やメールで行うのが一般的でした。しかし、その方法では、どうしても1対1の対応になってしまい、大量の質問を処理できません。
問い合わせ窓口が逼迫してしまうと、ユーザーを待たせることになってしまい、結果的に満足度の低下につながってしまう懸念もあります。カスタマーサポートの分野では、チャットボットを導入することによって、ユーザーの対応を自動化しています。
チャットボットの利点として、業務効率化だけでなく、データ分析も見逃せません。ユーザー情報を分析すれば、サービス改善やマーケティングに役立てられるほか、有人対応では見えなかった潜在的なニーズを発見できる可能性もあります。
社内ヘルプデスク
カスタマーサポートだけでなく、社内ヘルプデスクにもチャットボットが用いられています。カスタマーサポートと同様、従来のような有人対応では、負荷の増大や対応品質のバラつきなどの問題が懸念されるでしょう。
特に比較的規模の大きい企業では、マニュアルの複雑化も珍しくなく、「どのマニュアルを見れば問題を解決できるか分からない」といった問い合わせも想定されます。問い合わせ窓口が1つではないこともあり、たらい回しになることもあるでしょう。
FAQチャットボットを社内で活用することによって、社内システムの使い方やトラブルの対処法、手続きの方法などのやり取りが全て自動化できます。問い合わせをする従業員と、社内ヘルプデスクの担当者の双方にとって大きなメリットがあります。
FAQチャットボットの選び方
FAQチャットボットを選ぶ際は、「そもそもチャットボット自体が必要かどうか」「AI搭載型を活用するかどうか」などいくつかのポイントがあります。ここでは、FAQチャットボットの選び方を詳しく解説します。
FAQチャットボットの導入目的を明確化する
まずは「なぜチャットボットが必要なのか」「チャットボットの導入で何を達成したいのか」を明確にしましょう。よく見られる目的は、「ユーザー対応や社内ヘルプデスク業務の自動化」です。
チャットボットにはさまざまな種類があるため、目的が明確になっていないと、自社に合ったサービスを選べなくなるリスクもあります。特に後述の「AI搭載型のチャットボットを選ぶか否か」などは、導入の成否に大きく関わる要素です。
チャットボット導入の目的と合わせて、どこに設置するのかを決めておくのも重要です。例えば社内のクローズドな環境に設置するのか、ユーザー対応のためにSNSに連携させるのかによって、運用が変わってきます。
FAQチャットボットとFAQシステムの比較をする
次に、FAQチャットボットとFAQシステムの比較をします。つまり、「そもそもチャットボットが必要かどうか」を判断するフェーズです。ここでは、FAQチャットボットが向いているケースと、FAQシステムが向いているケースを詳しく解説します。
FAQチャットボットが向いているケース
FAQチャットボットが向いているのは、質問内容が明確であり、QA・シナリオ分岐のパターン化や分類がしやすいケースです。さらに、「ユーザーに気軽に問い合わせをしてもらいたい」と考えている場合も、チャットボットが適しています。
FAQチャットボットの魅力は、その手軽さです。膨大な情報から目当てのものを検索する必要もなく、会話形式で情報を収集できるため、ユーザーにとってもハードルが低いといえます。本来では問い合わせをしてこなかったユーザーを取り込める可能性もあります。
さらに、チャットを通して自社の商品やサービスに興味を持ってもらえることもあります。FAQシステムとは異なり、ユーザーとのコミュニケーションに重点を置いているのも、チャットボットの特徴です。単なる質疑応答だけでなく、会員登録や予約などの処理を促しやすいという利点もあります。
FAQシステムが向いているケース
FAQシステムが向いているのは、「想定される質問や回答が明確になっているケース」や、「多くのQAを扱うケース」です。大量の情報があっても、検索を使って目当ての情報を絞り込めるのが、FAQシステムの利点になります。
さらにWebサイトのページを使って回答を作成できるため、写真や画像などのリッチコンテンツを使うような場合も、FAQシステムが向いています。
なお想定シナリオが多い場合でも、「QAジェネレーター」のようなQAリストの自動生成ツールを使う場合であれば、担当者の負担を減らせます。FAQチャットボット、もしくはFAQシステムを導入する場合は、こうした外部ツールを有効活用するのも重要です。
AI搭載型を活用するかどうかを判断する
チャットボットには、「対話型AI」が用いられているものもあります。シナリオ型FAQチャットボットは、決められた問答にしか対応できません。しかし対話型AI搭載のものであれば、ドキュメントやユーザーとのやり取りを学習することで、規定のシナリオにないリクエストにも対応できるようになります。
対話型AI(AIチャットボット)とは
対話型AIとは、人工知能を搭載したチャットボットです。自然言語理解(NLU)を中核機能として採用しており、ユーザーの使用履歴に基づいて学習をするのが最も大きな特徴となっています。回答精度の自動アップデートも可能です。
FAQチャットボットで対応できなかった複雑な質問・対話であっても、AIチャットボットであれば、対応できる可能性が高まります。学習期間が必要というデメリットはありますが、サービスによっては学習済みAIを搭載して、学習期間を短縮してくれるものもあります。
対話型AI(プラットフォーム)とは
対話型AI(プラットフォーム)は、質問へ回答するだけでなく、さまざまなワークフローを通して問題を解決できるシステムです。回答以外の処理を実行するために、さまざまな外部システムと連携しているのが大きな特徴になっています。
例えば「請求書の再発行はできる?」という質問に対して、まずは質問の意図を理解し、再発行ができるかどうかを通知します。その後、会話の内容から該当する請求書を特定し、外部サービスを通じて再発行を実行するという流れです。
サポート内容を確認する
どの種類のチャットボット(あるいはプラットフォーム)を活用するかを決定したら、次にサポート内容を確認します。FAQチャットボットを導入するにあたって、操作方法を覚えたり、シナリオの作成をしたりする必要があるからです。
もちろん全て自前でやることもできますが、提供会社のサポートを受けた方が、よりスムーズに導入を進められます。そのサポート体制についても確認しておきましょう。
なお対話型AIプラットフォーム「Cognigy」のサポートは、専任のコンサルタントが、初期設定から運用改善までトータルでのサポートを行なっています。サポート回数は無制限で、なおかつ無料(追加費用も一切なし)で利用できるのが特徴です。
無料トライアルを活用する
上記の条件から具体的なチャットボット候補を絞り込み、可能であれば、無料トライアルで使い方・性能などを試します。無料トライアルでは、「イメージしていた操作性に近いかどうか」を軸にして確認するのがおすすめです。
無料トライアルで特に問題がなければ、実際にチャットボットの導入をします。更新のタイミングや費用の支払い方法など、契約周りの確認を徹底し、後になってトラブルが発生しないように注意しましょう。
導入後は、ユーザーの反応を確認しつつ、細かいところをブラッシュアップしていきます。まずはチャットの履歴を分析し、「十分な回答を用意できていない部分」「そもそも回答自体ができていない部分」を探しましょう。
企業のFAQに関する課題をチャットボット導入で解決
FAQチャットボットは、カスタマーサポートや社内ヘルプデスクで活用でき、業務効率化を期待できます。ユーザー情報を分析できるのも大きなメリットであり、質問に対して回答するだけでなく、新しいビジネスチャンスのきっかけにもつなげられます。
チャットボットには、AI搭載型の選択肢もあります。短期間で拡張性の高いシステムを構築するのであれば、対話型AIプラットフォーム「Cognigy」がおすすめです。
Cognigyはチャネル連携、外部システム連携が可能です。QAリスト自動生成ツール「QAジェネレーター」との併用も可能で、充実したサポート体制があり、ユーザー数・ボット数無制限の無料トライアルも利用できます。FAQチャットボットの導入をお考えの方は、ぜひご検討ください。