コールセンター向けのチャットボットとは?機能や導入するメリット・事例などを解説
昨今、コールセンターの分野では、生産性向上・スタッフの負担軽減のためのチャットボット導入が注目されています。
本記事では、コールセンターに活用できるチャットボットの特徴や、押さえておきたい機能などを解説します。チャットボット導入のメリットや失敗しない選び方、実際の導入事例もあわせて紹介しますので、ぜひ企業の課題解決にお役立てください。
コールセンター向けのチャットボットの基礎知識
チャットボットは、AI(人工知能)の進化や生産性向上への取り組みといった背景で、コールセンターにも積極的に導入されています。まずは、チャットボットの概要や、コールセンターに導入されている理由を詳しく解説します。
コールセンター向けチャットボットの特徴
チャットボットとは、テキストや音声を使って、自動的に会話をするプログラムを指します。チャットボットの活用方法は多種多様で、社内ヘルプデスクやカスタマーサポートなどが代表的です。
コールセンター向けのチャットボットは、ユーザーの問い合わせに対してチャットあるいは音声で対応することで、オペレーター業務を代替する用途で用いられます。チャットボットによっては、会話の内容に応じて回答候補を提案し、オペレーターを支援することも可能です。
コールセンターにチャットボットを導入する場合は、導入目的を明確にし、業務内容に合ったものを選ぶ必要があります。詳しい導入方法については、後の項目で詳しく解説します。
コールセンターでチャットボットが活用されている理由
コールセンターでチャットボットが活用されている主な理由は、以下の通りです。
● AIの進化:会話の理解力向上・回答精度の向上に伴い応対品質向上が実現できる
● 従業員の業務負担軽減:「よくある質問」への対応を自動化することで従業員の負担を減らせる
● コストの低さ:ツールの種類もさまざまで、選び方によってはコストを抑えられる。ローコード開発可能なものもあり導入・運用もそれほど難しくない
● マーケティングへの活用:チャットボットでは会話・フロー選択履歴などのデータが蓄積されていき、分析に役立てられる
昨今では労働人口減少などの社会的要因もあり、コールセンターに限らず、さまざまな分野で導入されています。
コールセンター向けのチャットボットの機能
コールセンター向けのチャットボットの機能で理解しておきたい機能は、以下の4つです。
● 有人チャットの切り替え機能
● チャネル連携
● 外部システム連携
● オペレーター支援機能
上記の4つの機能について、それぞれ解説します。
有人チャットの切り替え機能
有人チャットの切り替えは、チャットボットからオペレーターに対応を切り替える機能を指します。「複雑な会話」など、チャットボットだけでは対応できないケースには、チャットボットから有人対応に切り替える必要があります。
特にシナリオ型(ルールベース型)と呼ばれるチャットボットの場合は、「あらかじめ設定されたシナリオに沿って回答する」という仕組みのため、シナリオにないことを聞かれても上手く回答できないことがあります。
有人チャットの切り替え機能があれば、複雑な会話が必要になった際に、チャットボットからオペレーターに引き継ぐことができます。臨機応変に対応できるため、ユーザーの利便性や満足度の向上にも貢献するでしょう。
チャネル連携
チャネル連携は、Webや電話、LINE、Slackなどのチャネル(集客のための媒体)と連携する機能です。コールセンターといえば、従来は「電話」での対応が一般的でした。しかし現在はインターネットの普及もあり、コミュニケーションの方法が多様化しています。
例えば、コールセンターに問い合わせようとするユーザーに対して、「LINEで問い合わせを促し、チャットボットにて対応可能な要件ならそこで解決してもらう」といった活用方法があります。
ユーザーは、普段使い慣れたコミュニケーションツールをはじめ、多くのチャネルで均質化されたサービスを受けられるようになります。有人チャットの切り替え機能と同様、ユーザーの利便性の向上が期待できる機能です。
外部システム連携
外部システム連携は、SalesforceなどのSFAや、CRM/MA・RPAツールといった外部システムと連携する機能です。
● SFA:営業を支援するためのツール
● CRM/MAツール:顧客情報管理やマーケティング施策自動化のためのツール
● RPA:ロボットにより業務を自動化するためのツール
例えばSalesforceと連携することによって、チャットボットを経由して、ユーザー情報の参照や入力が可能になります。
コールセンターでの対応において、ユーザー情報や過去の問い合わせを参照できるかどうかは、非常に重要なポイントです。ユーザー情報や過去の問い合わせを参照することによって、ユーザーの問い合わせを迅速に解決できるようになります。
オペレーター支援機能
オペレーター支援機能は、質問やリクエストに対する回答をテンプレート化しておくなど、有人での対応を支援するためのシステムです。定型文をテンプレート化するだけでなく、画像や動画などのコンテンツでオペレーターを支援できるサービスもあります。
オペレーター支援機能の核となっているのが、音声認識エンジンです。オペレーターとユーザー間の会話を認識し、テキスト化されたデータをもとにして回答を検索します。
上記のような機能が備わっていることによって、どのオペレーターが対応しても、同じようなサービスの質を提供できます。例えば、新人オペレーターが対応に詰まってしまい、顧客満足度が低下してしまうようなリスクを抑えられます。
コールセンターがチャットボットを導入するメリット
コールセンターがチャットボットを導入するメリットは、以下の4点です。
● 業務効率化
● カスタマーサポートの最適化
● 顧客満足度の向上
● 対応チャネルの増加
上記4つのメリットに関して、それぞれ詳しく解説します。
業務効率化
コールセンターがチャットボットを導入する代表的なメリットは業務の効率化です。
ユーザーから寄せられる質問は、毎日聞かれるシンプルなものから、複雑なものまで多種多様です。よくある質問への回答をチャットボットで自動化することによって、担当者がルーティンワークから解放され、より重要な質問への対応に労力を割けるようになります。これはまさに、コールセンターにおける業務効率化の典型的な例です。
チャットボットは、カスタマーサポートだけでなく、社内問い合わせ対応を効率化する際にも役立ちます。
例えば社内で何か問題が発生した場合、メールで質問する人もいれば、急ぎで電話をしてくる人もいます。そしてユーザー対応の場合と同様、「よくある質問」をされることも珍しくないでしょう。こうした対応を全てチャットボットで自動化すれば、業務効率化に大きく貢献します。
カスタマーサポートの最適化
カスタマーサポートの最適化も、チャットボットを導入するメリットです。コールセンターでは電話による対応が一般的ですが、問い合わせで混み合っている状態になると、どうしても待ち時間が発生してしまいます。
すぐに対応できれば良いですが、曜日や時間帯によっては、数分から数十分待たせてしまうことも珍しくありません。そもそも営業時間外で対応できず、次の営業開始時間までユーザーを待たせてしまうケースもあります。
上記のような状態では、ユーザーがストレスを溜めてしまい、顧客満足度が低下してしまうリスクもあります。チャットボットを活用すれば、365日24時間の対応によって「待ち時間」の問題を解決できるなど、迅速なカスタマーサポートが可能です。
顧客満足度の向上
業務効率化や最適なカスタマーサポートを通じて、顧客満足度の向上につなげられるのも大きなメリットです。
コールセンターにおける業務効率化とは、先述のように、「対応の自動化で業務負担を減らすこと」です。業務負担が少なくなることによって、オペレーターは、「スタッフによるサポートが必要なユーザーだけ」に注力できるようになります。余裕を持って対応できるようになるため、サービスの質も高まり、結果的に顧客満足度の向上につながります。
「待ち時間の解消」「ユーザーにとっての利便性向上」など、カスタマーサポートの最適化も、顧客満足度に大きく関係しています。
対応チャネルの増加
対応チャネルの増加も重要なメリットです。先ほども触れたように、チャットボットには、複数チャネル連携の機能が備わったものもあります。さまざまなチャネルに連携できるチャットボットであれば、企業とユーザーの接点を維持しやすいでしょう。
コールセンターでは、電話でのコミュニケーションが基本です。しかし、ユーザーには「電話ではなく、もっと気軽に質問をしたい」というニーズがあるかもしれません。チャネルを連携することで、ユーザーの心理的ハードルを下げ、コミュニケーションの頻度を増やす効果もあります。本来では問い合わせて来なかったユーザーなど、新規顧客を見込めるケースも期待できるでしょう。
コールセンター向けチャットボットを正しく選ぶ方法
コールセンター向けチャットボットを正しく選ぶ方法は、以下の通りです。
● チャットボットの種類を理解する
● 導入目的を明確にする
● 各種機能を確認する
● 導入までの手間・費用を想定する
● サポート体制が充実しているかどうかを確認する
上記5つのステップについて、詳しく解説します。
チャットボットの種類を理解する
まずはチャットボットの種類について、それぞれの特徴を整理しましょう。大きく分けると、「シナリオ型チャットボット」「対話型AI(AIチャットボット)」「対話型AI(プラットフォーム)」の3つがあります。
シナリオ型チャットボット
シナリオ型チャットボットは、AIを搭載しておらず、あらかじめ設定されたシナリオに基づいて回答をするものです。パターン化しやすい、典型的な問い合わせの対応に適しています。
シナリオ型チャットボットのメリットは、比較的簡単に導入ができる点です。複雑な会話が想定されず、シンプルなチャットボットを導入したい企業に向いています。
ただしシナリオ型は、あくまでも事前に登録されたデータに基づいて回答をしているだけなので、ユーザーの質問の意図までは理解できません。シナリオ以外の質問への回答や、複雑な会話には向いていないので注意しましょう。シナリオ型の性能では足りないと考えられる場合は、AIを搭載したチャットボットを選ぶのがおすすめです。
対話型AI(AIチャットボット)
対話型AI(AIチャットボット)は、ユーザーがフリーワードで入力した質問文に対して、適切な回答を提示するものです。自然言語理解(NLU)が中核機能として備わっており、ユーザーの質問の意図を理解できるのが特徴といえます。
対話型AIのチャットボットは、シナリオ型よりも複雑な会話が想定される場面で活用されます。例えばWeb接客やセールスのような、パターン化された業務ではなく、臨機応変な対応が求められるシチュエーションです。
対応の柔軟性が大きなメリットではあるものの、学習が必要になることもあり、リリースまでの労力や費用が高くなりがちです。さらに、チャットボットの学習が十分でない状態だと、見当はずれな回答をすることもあります。
対話型AI(プラットフォーム)
対話型AI(プラットフォーム)は、質問に対して回答するだけでなく、さまざまな処理を自動化してユーザーの問題を解決できるシステムです。コールセンターのサービスを超えた、新しいユーザー体験を可能にします。
対話型AI(プラットフォーム)の特徴は、チャネルや外部システムと連携し、さまざまな業務プロセスをつなげられることです。ユーザーは、どのチャネルでも均質化したサービスを受けられます。
例えば「商品の注文をキャンセルしたい」と質問すると、連携している業務システムや顧客管理システムの情報を参照し、自動でキャンセル処理をします。他にも、会議室の予約や社内問い合わせ対応の自動化など、さまざまな活用方法があります。
導入目的を明確にする
チャットボットの種類を理解できたら、次に導入目的を明確にします。コールセンターにおける具体的な利用シーンと、導入のゴール(業務効率化など)を設定しましょう。具体例は以下の通りです。
● 具体的な利用シーン:社内向けの問い合わせを受けているコールセンターで、社内営業をサポートするためのチームがある。営業担当者からの問い合わせ対応を効率化するために、チャットボットを導入
● 導入のゴール:営業担当者が電話だけでなくチャットでの問い合わせもできるようになり、「電話問い合わせ比率が◯%下がっている状態」を達成
具体的な利用シーンと導入のゴールが明確になっていると、「どの種類のチャットボットを選べばよいか」が見えてきます。
各種機能を確認する
チャットボットの種類を選んだら、次にツールの選定に移ります。チャットボットに搭載されている機能を確認しながら、ツールを比較検討しましょう。あらかじめ、目的に合わせて必要な機能をリストアップしておき、その内容に合わせて選ぶのがおすすめです。
例えばコールセンターの業務において、「複数のチャネルで同じような質のツールを提供したい」と考えている場合は、チャネル連携の機能が欠かせません。機能を確認する際に、もう一度自社の課題を洗い直すのもよいでしょう。
本記事でも紹介したように、「有人チャットの切り替え機能」「チャネル連携」「外部システム連携」「オペレーター支援機能」などは、コールセンターでの業務によく必要とされる機能です。
導入までの手間・費用を想定する
導入までの手間・費用を想定しておくのも重要です。例えばチャットボットを導入する際は、シナリオ型か対話型AI型かを問わず、QAリストを作成しておく必要があります。QAリストを自社で作成するには工数がある程度発生します。そこでAIが自動でQAリストを生成するツール「QAジェネレーター」の利用もおすすめします。
チャットボット導入時は、手間や費用を具体的に想定し、計画的に進めるのが大切です。特に対話型AIは、シナリオ型チャットボットに比べて、価格や利用料金が高くなる傾向にあります。
手間・費用と関連して、無料トライアルに対応しているかどうかも確認しておきましょう。無料トライアルが可能であれば、使い勝手や自社用途との親和性を含めて、ツールの詳細を確認できます。ツールによっては、一部機能が制限されている場合もあるため、事前に問い合わせておくとよいでしょう。
ローコードで高機能AIチャットボットを開発できる対話型AIプラットフォーム「Cognigy」は無料トライアルに対応しており、「まずは実際に試してみたい」という場合におすすめです。
サポート体制が充実しているかどうかを確認する
サポート体制を確認しておくのも重要です。本記事でも触れているように、チャットボットを導入する際は、QAリストやシナリオを作ったり、チャネル・外部システムと連携させたりといった事前準備を行う必要があります。
さらにチャットボットを導入し、運用を開始した後も、定期的なメンテナンスを行わなければなりません。導入から運用まで、自社で全てを済ませるとなると、大きな負担がかかってしまいます。
提供会社によっては上記のような導入・運用にあたって充実したサポートを提供しており、自社の状況に応じて必要なサポートが受けられるツールを検討しておくのがポイントです。
Cognigyでは、専任コンサルタントが、初期設定から運用改善までトータルでサポートしています。サポートは回数無制限かつ無料であり、追加費用も一切発生しません。
チャットボット導入事例
チャットボットの導入を考えている場合は、実際の事例を参考にするのもおすすめです。ここでは、チャットボット導入事例として、以下の2つのケースを紹介します。
● 株式会社はせがわ
● 熊本市
カスタマーサポートの最適化や業務効率化を達成した事例
株式会社はせがわ様は、「お仏壇のはせがわ」で知られており、墓石事業などを展開している企業です。「Cognigy」によって開発・構築したチャットボットには、以下のような機能を実装しました。
● 仏壇・仏具のオンラインショップおよびお墓相談へのお問い合わせ機能
● 店舗予約機能
● カレンダー連携
● メール連絡機能
● リマインダー機能
これにより、営業時間外でも問い合わせ受付や予約受付を自動化できるようになり、「24時間365日」の対応を実現しています。さらに新型コロナウイルス感染症拡大のなかで、非接触・非対面での営業により、事業を安全・安心の形で継続することにも成功しました。
導入したのは、シナリオ型に比べて自然な会話ができる、AI搭載型のチャットボットです。ユーザー体験を損なわずに、業務効率化を達成しています。
多言語による観光案内の自動化を達成した事例
熊本市の公式観光サイトである「熊本市観光ガイド-こころに来るね、くまもと-KUMAMOTO TO HEART」にも、Cognigyを用いてAIチャットボットを構築・導入いただきました。
具体的には「多言語対応」をメインの機能としており、観光客のニーズに合わせた観光案内をしています。対応言語は、日本語、英語、韓国語、中国語(簡体字、繫体字)、タイ語、フランス語、ドイツ語です。実装した主な機能は以下の通りです。
● 観光案内(観光地案内、グルメ案内、緊急情報案内など)
● 多言語対応
● CMS連携
● 現在地取得機能
● 地図表示/他ページ遷移
同サイトにはお問合せの電話番号も記載されていますが、チャットボットとの併用により、多言語による観光案内の自動化を達成しています。
コールセンターが抱える課題をチャットボットで解決
チャットボットは、オペレーターがこなしていた業務を代替する存在として、コールセンターでも活用されています。有人チャットの切り替えや、チャネル・外部システムの連携など、技術の発展に伴って使える機能も増えてきました。
チャットボットを導入する際は、目的を明確化し、複数のツールを比較検討する必要があります。さまざまなツールと連携して業務を自動化したい場合は、AIチャットボット(プラットフォーム)がおすすめです。
Cognigyは、チャネルや外部ツールとの連携が容易であり、ローコードでAIチャットボットを構築できます。ユーザー数・ボット数無制限の無料トライアルや、各種サポート体制も充実しています。AIチャットボットの導入をお考えの場合は、ぜひご検討ください。